勤務初日

くたびれたけど特に何もしてない・・・。今日はそんな感じだった。


8時半に集合と言われていたので、8時20分ごろに指定されていた部屋のドアを叩いた。どきどきしていたが、面識のある職員の方がちょうど応対してくれたのでそれも少しほぐれた。部屋には今日から採用の同期が集まっていた。自分を含めて3人。秋に採用されたのは自分を含め2人。全員男だった。10時までは、時折提出すべき書類が配付され説明を受けたりしつつも、基本的には3人で部屋で待機している状態だった。ここで同期と雑談・・・したらよかったのだが、最初に少し話しただけで途中からはほとんど沈黙に支配されていた。同期の二人は自分より年上のようだったし、地元出身ではなかった。だから何をどこまで突っ込んで訊いていいものやら、まだ距離感というか、塩梅のようなものが分からなかったので、質問を口にしようかと思いつつしまいこんでしまう感じの繰り返しだった。この「雑談が苦手」なことが、後々まで自分のウィークポイントとして足に引っかかってくることになった。この時点でもう緊張感は消え去っており、すっかり平常心を取り戻していた。でもリラックスしてしまうのもどうかと思ったので、椅子の背もたれに寄りかからないようにして背筋を伸ばしたり、携帯はカバンから出さず使わないようにしたり、自分なりに節度を守るように心がけていた。当然のことながら、人が説明をしているときはその人の顔を見るとか、きちんと返事や挨拶をするといったことも心がけていた。10時になると、別のところ(会議室)に移動になった。


10時20分ころから10分ほど、辞令交付式が行われた。新採用と出向を終えて職場に復帰した人などが参加し、一人ひとり台の前に歩み出て、辞令の書かれた紙を受け取った。受け取り方は説明を受けていたし、自分より先の人が受け取る様子を何度も見て覚えたので大したことではなかったはずだったが、結構緊張した。自分が配属となった部署は秘密。というかまだ何をする部署なのか、名前だけではいまいちよく分からないのだ。式が終わると早速自分の直属の上司がやってきて、自分の部署まで案内してくれた。途中、談笑している学生の横も通ったが、昨日まで自分も彼らと同じ学生だったのに、今は全然反対の立場にいるんだなと思って、何だか不思議な気分になった。同時にもうすでに、彼らを自分とは全く別の存在として認識しているというか(誤解を恐れずにあえて言えば親近感・同族意識を感じない)、自分を社会人だと意識するスイッチが入っている感じで、何だか自分でも意外だった。


部署まで案内され、自分はまず部署の人に「おはようございます」と挨拶し、新採用でここに配属になったことを告げた。部署の人たちからも自己紹介を受けたのだが、名前を覚えられる気がしなかった。一度に大勢の人と知り合うなんてことは今までなかったから、記憶力にはあまり自信が持てなかったのだ。多分、今日覚えられたのはトータルで10人くらい。まあほとんどの人は職員証を首にぶら下げているし、徐々に覚えていけばいいだろう。そして早速自分の机の席に着いたのだが、ここですぐに転属含め新たに配属された人たちで束になって各部署に挨拶回りに行くことになり、その後ろについて出かけて行くことになった。おそらく10回くらい自分の配属先、名前、よろしくお願いしますという言葉を繰り返したと思う。最初は体が強張って、部署の名前もしっかり言えなかったが、後半になるにつれ少しまともになった。それが終わってデスクに戻ると、とりあえず少し落ち着いた。その後も、ほかの挨拶回り集団がやってくる度に今度はこちらが聞き手となって応対した。上司からPCの使い方、職員用のポータルサイトやメールの使い方の説明を受け、少しPCを構ったりしているうちに12時になった。


昼休みは、学食で食事を取った。値段は安いが、味やメニューの数といったクオリティの面では正直あまり満足できるものではなかった。少なくとも新大には明らかに劣る。うーん、明日からは外で食べるか弁当を持参するとしようか。食後は売店で買った牛乳で喉を潤し、そのまま自分の席に戻った。昼休みと言っても特にやることもなかったので記録をつけたり、朝貰った給与や手当てなどの提出書類を書いたりしていた。


すぐに13時になり、午後の業務が始まった。ここからの内容はすごーく薄かった。上司が忙しくて指示や指導がほとんどなかったので、断った上でさっきの提出書類を書いたり、それを担当部署に持って行ったりしていた。ほとんどそれだけだった。自分が担当する仕事のひとつの簡単な説明(まだ実践できるレベルの話ではない)や、コピー機の使い方、書類を書き損じたときの修正法、メールの使い方の説明・・・教えられたのはその程度だった気がする。たまに近くの机の人に話かけられて短く答えたり、職員証の写真を撮ったりもしていたが、手持ちぶさたな時間が長かった。本当に申し訳ないくらいに、ただ席に座っているだけという感じで。しかしそれでも疲労はやってくるもので、少し度が強いコンタクトのせいもありだんだん手元の視界がぼやけてもきた。車の運転や屋外の移動の際にはこのコンタクトでちょうどよかったのだが、近くを見るのには少し強すぎるようだ。土曜にでも度の弱いコンタクトに変えてこねば。でないと眼精疲労が溜まる一方だ。暇なら他の人の手伝いをすればいいのではないかとも思ったのだが、そもそも右も左も分からないほど何も知らず、何も経験がない訳なので、出来ることなどあろうはずもなかった。いや少しはあったかもしれないが、自分の上司以外に伺いを立てるという発想がなかった。明日からは具体的にもう少し仕事を教えるからと言われ放置されていたので、今日は後ろめたくもこうして過ごすしかなかった。中身の薄い作業を勝手にしていつつ、時間の長さを実感しながら時計に何度も目をやりながら過ごした。そしてとうとう待ち遠しかった17時15分がやってきて、終業のチャイムがひびいた。いいのかな?って気がしないでもなかったが、時間になったら帰っていいよと言われていたので、荷物をまとめると残っている人たちに「お先に失礼します」と挨拶をして帰途に着いた。部署を少し離れたところで傘を忘れたことに気付いたが、面倒だったのでそのまま外に出て車に乗り込んだ。目が疲れていたので、帰りの運転は事故を起こさないかちょっと心配だったが、とりあえず初日は乗り切れたという安堵感は心地よいものだった。同じ部署の人たちはみな親切な人たちだったので、明日からも安心して働けそうだ。


帰宅後は家族から初めての出勤の感想などを訊かれてそれに答えた。3日発売のはずの貞元エヴァ12巻が早くも届いていたのでそれを読んで気分をリフレッシュ。これからやっているかな、という不安ももちろんそれなりにはあるが、自分は相当恵まれているといえるだろうし、この仕事を放り出すようならどんな仕事も出来はしないだろうという確信があるので、真面目にやっていこうと再び思ったのだった。21時半には寝たかったが、初日の感想をしっかり書き残しておこうと思ってキーボードを叩き始めたらこんな時間になってしまった。明日も6時起きなので(本当はそんなに早起きする必要はないが家族に合わせるとそうなってしまう)、この後は収支をつけたら即座に寝るつもりだ。ああ、早く土曜にならないかなー。待ち遠しい。

(105分)