「卒業」(1967)

マイク・ニコルズ監督、ダスティン・ホフマン主演の映画「卒業」を見た。1967年の作品。43年前だ。アポロが月に行く2年前だから相当古い。


これを見た理由は、「結婚式の最中に乱入してきた男によって花嫁が教会から連れ去られる」という展開の元祖(元ネタ)だから。ただ元ネタを知っておきたいという単純な動機で見てみたのだった。


まず感じたのは「ダスティン・ホフマン若いな!」ってこと。43年前なんだから当然だ。車に乗ってるのにシートベルトをしていなかったり(ついてすらいなかったのかも)、登場人物たちがところ構わずタバコをふかしまくってたりするのも時代を感じた。簡単にストーリーを説明すると、大学を卒業したてで将来に不安を感じている主人公のベン(ホフマン)が、ロビンソン夫人に誘惑されて自堕落になるけど、夫人の娘のエレーンのほうが好きになって最後には彼女を結婚式場から強奪するっていうお話。若者の青春期の虚無感とか葛藤を描いた名作と評価されていて当時は大ヒットしたらしい。ただ今の感覚で見ると、エレーンを追っかけまわすベンの行動がストーカーすれすれだったり、何でエレーンがベンのことを好きになるのかが描写不足で何だか不自然だったり、親を裏切って駆け落ちした二人に対して彼らの将来は一体どうなっちゃうんだと強い不安感が残ったりして、現代の若者として主人公に全く共感できるかといえばそんなことはなかった。まあ駆け落ちのときの不安というのはいつの時代も共通するものに違いなかろうし、ラストシーンでも二人の顔はそんなに明るくなかったから、若者らしい向こう見ずな行動として描いたものなのだろうが、自分は全てを投げ打ってそんな行動なんかできっこないなぁと自分がいかに保守的な人間であるかを再確認させられたのだった。一番印象的だったのは、全編を通して流れるサイモン&ガーファンクルの曲だった。特に「♪パセリセージローズマリーアンドタイム」の一節で有名な「スカボロー・フェア」が流れたときは思わず聞き入ってしまった。というのも中学だか高校だかの音楽の授業でこの曲を習ってよく覚えていたので、この映画で使われたのがポピュラーになったきっかけなんだと分かって嬉しかったのだ。まあ全体としてあまり自分の好みの作品ではなかったが、映画史の1ページに残る作品を見れたことは自分にとって財産になったと思うし、今や祖父ほどの年齢のホフマンの若かりしころの姿をじっくり見られただけでも十分価値はあった。


ラストの結婚式のシーンは様々な作品にパロディとして使われているが、ホフマン自身が再び演じているものもある。以下のアウディのCMがそれである。

D

現代の文化・芸術作品というのは必ず過去の作品の影響を受け、模倣や引用を重ねながら成立している。その歴史を辿る事で各々の作品をもっと深く知り、楽しめるようになりたいと思っているので、今後もときたまこうした古い作品に触れて行きたいと思っている。

(80分)