異動(退任)の挨拶

 前身の企画広報課で1年、経営企画課になってから4年と、この課で通算5年仕事をした。いつ異動を命じられてもいいように、気持ちと引継書の準備をしてきたが、このたびの人事異動内示で4月1日から財務課に配置換えとなった。今日が実質的に、 今の課での最終勤務日となる。


この課に来て最初の1年は、改革担当として仕事をした。大学改革の様々なワーキンググループが立ち上がって、その日程調整に追わ れたり、第3期中期目標・中期計画の策定作業に携わったりした。 2年目から現在までの4年間は、評価担当として、法人評価、認証 評価、自己点検・評価等の大学評価はもちろん、文部科学省等から依頼された各種調査への回答、大学ポートレートの更新、 大学改革支援・学位授与機構に提出する教育研究評価データの作成 など、評価業務全般に携わった。経営企画課の2つの担当を両方経験したことで、それぞれの仕事がどう関わって、どんなふうに動い ているかがよく分かったし、特に評価には4年もの長期間在籍したので、重層的で複雑な評価制度について時間をかけて学び、実践的なノウハウを修得することができた。情報戦略室と大学評価委員会の事務局を担当をする中で、議題を決めて、自分で資料・ 進行メモを作って、副学長と打合せをして…といった会議運営のイロハを会得できたのも財産になった。


この課では、良くも悪くも執行部との距離が近いので、大学組織としての意思決定、報告書等の合意形成の作業に日常的に直面する。 それは基本的に困難で、執行部の過大な要求や怠慢、気まぐれに翻弄されることも多々あったが、組織を動かす、組織として動くということの仕組みや意味を肌で感じながら学ぶ機会でもあった。大学という、 何かにつけ内向き志向で、部門間の壁(セクショナリズム) が強固な組織において、常に組織全体のことを見渡し、外からどう 見られるかということを考えて、なおかつ「このままではいけない 」という健全な危機感を持って仕事が出来たのは、自分にとっても プラスだったと思う。


5年間、長すぎて、自分のことも何もかも変わった。5年前は26歳で独身だったのが、今は31歳で結婚して子供も生まれた。うちの課は残業が多くてプレッシャーも大きい中で、ここで仕事オンリーの生活だったらあっという間に30歳だと焦ったからこそ、当時の自分は、今やるべきことの優先順位を必死で考えて、もがい て、突き進んだ。仮に時間にゆとりがあって自分の趣味の時間を謳歌できていたら、おそらくまだ結婚もしていなかっだろう。「仕事は人生で2番目に大事なこと」という考え方を持っていたことも、日常が仕事一色に染まるのを防いでくれた。その間、仕事での不満やストレスはものすごくあったし、誰にも喜ばれない、成果の感じにくい評価業務に対するモチベーションの波もかなりあった。また、 家庭もまだまだ発展途上で大小のいざこざは毎日あり、仕事も家庭も大変で精神的にぐったりしていたことも、何度もあった。 それでも最終的には、大学全体の改善の歯車を動かし、社会に対する説明責任を果たすという評価担当の仕事の目的に自分なりのやり甲斐を見出して、色々提案したりしながら前向きに頑張ってきた。 専門性の高い業務で、担当者の判断、裁量に重みがあること、「企画とは、新たな仕事を創ることだ」というポリシーを持っていたことも、常に心の支えになった。3年前、 評価担当2年目のときに自分が立てた目標と、現在の状況を見比べてみると、その多くは実施できていて、着実に前に進んできたなという達成感がある。


この課に来る前は、総務課で給与担当をしていた。そのとき、給与というのはバラバラのパズルピースを組み合わせて1つの形を作る ような仕事だと感じていたが、評価の仕事も、報告書という形に向けて様々な情報をかき集めて組み合わせるという意味では同じだった。それが自分の性格にもマッチしていたし、仕事の醍醐味でもあ った。ただ、給与の正解は1つしかないが、評価はピースを加工して形を変えられるし、最後の最後で入れ替えたりもできて、 答えは一つではない。だから評価のほうが奥が深くて面白かったし 、自分は評価の仕事が好きだった。進む道に終わりや完成はなく、いくらやっても飽きることはない。だが、だからこそ、ここで一旦離れるのが自分にとっても妥当だろう。仕事はあくまで借り物であり、自分個人の所有物ではない。今の自分には、 評価に凝り固まった頭を少し柔らかくするための、新たな挑戦が必 要なのだと思う。


自分が評価という仕事を通じて蒔いてきた様々な種は、まだ芽を出したばかりだ。成果という果実が実ることを願い、その収穫は潔く後任者に託す。いつかまた戻ってきて、自分の手でもう一度収穫できたら、幸運だ。そう思いつつ、新たな気持ちで、大学のためにいかに貢献するかという大きな目標を胸に、次の部署でも職務に励みたい。


(90分)
※課の送別会で話すことを考え始めたら長くなってしまったので、 記事として整理した。実際に送別会で話したのは、この1割くらい の内容に、少し付け足したもの。