ノイズ

2月も下旬になった。まだまだ寒さの続く日本海側の豪雪地帯にも少しずつ春の足音が近付いてくる時期…なんていう常套句が全く似合わない、雪のない景色が広がっている。例年なら1m以上積雪がある平地の田んぼは、すでに土がむき出しになっていて、道路はノーマルタイヤでも全く心配ないほどに乾いている。この時期に、雪ではなく雨が降るなんて、自分の子ども時代には考えられないことだった。2年連続で雪のほとんどないまま冬が終わりつつある。雪が全くなく、当時住んでいた新潟市のアパートから上越の実家までクロスバイクで130kmを走って帰省した2007年2月を彷彿とさせる、季節感のない景色だ。毎日窓の外を見るたびに、違和感を覚える。唯一の救いは、山にはある程度雪が積もっていることか。こんなのは異常だ。


異常といえば、自分のメンタルも、ずいぶん前から異常を来している。壊れたラジオみたいに、ずっとノイズばかりで意味をなさず、ほとんどまともに機能していない。ノイズで周りに迷惑をかけないように、心のボリュームは最小レベルにして、自分の声を抑えている。三日前に車検を受けて愛車のアクセラは調子を取り戻したが、自分は故障中のまま。自分の心の声が聞こえないし、何かに打ち込むこともできないでいる。オーバーホールに出せるものなら出したいくらい、ガタが来ている。人間関係や利害関係がこんがらがり過ぎて立場を失った今の仕事で、成果を出せるエネルギーもない。最後の希望は、「ここではない、どこか」にたどり着くこと。壊れたものを直すとか、失ったものを取り戻すとか、そんなことには時間と労力はもう割かない。ダメなものには見切りをつけて、何かの、どこかの、新しい世界に入りたい。ノイズに支配されそうな意識の中で、その希望だけは見失わず、そこに残っている最後のエネルギーを注ぎたい。それがダメだったら、果てるまでだ。

(携帯、30分)