一縷の望み

前髪のM字ハゲの進行が止まらない。前髪をかきあげるとそこには目を覆いたくなるような悲惨な光景が広がっている。まさか26才でこんなことになるなんて、ほんの2年前までは全く想像だにしていなかった。誰かが働き者の開拓使でも送り込んだのだろうか。少しずつ、しかし確実に、その面積が広がっているのがわかる。今は前髪を左右に振り分けたりして何とかハゲ隠しに努めているが、それとて所詮は悪あがきに過ぎず、根本的な解決にはなっていない。みっともない上に、そうした抵抗もほとんど限界に近付いている。ここまで来たら、もはやなりふり構ってはいられない。戦うと決めた以上は出来る限りのあらゆる手を尽くさなければきっと後悔することになる。腹を決めた自分は、あの発毛剤に一縷の望みを託すことにした。

大正製薬の「リアップX5」である。一昨日、近所のドラッグストアで購入した。今夜から使い始め、寝る前と起床後の1日2回使うことにした。1カ月分の容量が7600円もするので、はっきり言ってメチャクチャ高いが、他に有効な手立てが考えられない以上、背に腹は代えられない。とりあえずは、効果が出るまでの4カ月間、毎日使ってみるつもりだ。元より「ふさふさ」なんて望んではいない。前頭部に鋭い切れ込みを刻んでいる「デスバレー」がほんの少し埋まってくれさえすれば、もうそれだけで十分だ。ハゲのことで気を病むことなく、人の髪の毛を羨むことなく、自分に自信をもって人と接することができる日が来ること、それが一刻も早く実現することを、ただただ願ってやまない。

(40分、ミクスペリア)