武装強化

4月1日の異動で給与担当を外れて早2週間が経った。先週までは現任の仕事と、前任の給与の仕事の二足のわらじで、残業続きだったが、4月給与の処理が済んでようやく落ち着いた。自分ですべてやってしまえば早いが、元上司や後任者に覚えてもらわないといけないので、自分が隣に座って説明・指示し、彼らの手でやってもらうという形で作業をした。特に、何をするかということのみならず、どうしてこうするのかという解説をして極力理解してもらえるように心掛けた。そのため普通の倍くらいの時間を要してしまったのだった。


自分が前の仕事を外れて強く感じたのは、自分の在任中に給与計算を「誰でも出来る仕事」ではなくしてしまっていたということだった。給与計算システムの機能をフルに活用したり、エクセルの表で関数を巧みに組み合わせ複雑な処理を実行して手作業を省いたり、別々の場所に保存された複数のファイルを使ってデータを加工したりといった、短時間で効率よく作業を進めるために工夫し合理化してきた部分が、ほかの人から見るとどういうことをやっているのか全く分からない状態になっていた。極端に言えば、自分が死んだら誰もマネできない仕組みになってしまっていたのである。給与計算全般を一人でオールマイティにやっていたことの弊害といっていいだろう。「自分だけにしか分からないシステム」がガッチリ構築されてしまっていた。給与計算システムの操作と構造への高い習熟と、失敗を含めた豊富な経験、そして脳内の個人情報データベースに高度に依拠した仕事のやり方は、それこそ「細かいコツ」の集積のような職人芸になってしまっていた。自分は50ページ超に上るマニュアルや、給与処理手順を全て書き出したチェックリストによって、後任者のハードルを下げたつもりでいたのだが、実際にはかえってハードルを上げてしまっていたのだった。与えられた仕事を工夫するのはよいことだが、代替性のない、誰にでも出来ない仕事にしてしまうのは、事務組織の一員としては失格だ。これについては反省している部分である。


一方で、3年の実務を通じて得た豊富な知識という「武器」を、担当を外れたからといってこのまま忘れ去ってしまうのもまたもったいないと思い始めた。ほかの人が難しい顔をして作業をしているのを見るにつけ、自分がいかに給与に向いていたかというのを感じたからである。ここは一念発起して、社会保険労務士でも目指してみようか、合格率5%の難関に挑んでみようか、という野望が徐々に膨らんでいる。難関資格を取れれば、自分の武器として、今の職場でも、あるいはほかの職場に移ったとしても通用すると思うし、職場環境に左右されない確実なメシのタネを手に入れることが出来る。これが自分の進むべき方向性だと決めて、これからちょっと具体的に考えてみたい。

(30分)