仕事術 その2(能率アップ編)

恒常的な超過勤務をなくし、限りある時間を仕事だけでなく、自分への投資や余暇に振り向けること。それによって、持続的な成長が可能な調和の取れた働き方=ワークライフバランスの実現を図ること。これらを目的として自分が日々研究と工夫を重ね、実践してきた「仕事術」を、13項目に整理し、解説を加えてまとめてみました。どれも難しいことではなく、普段のちょっとした心掛け次第ですぐに実践できるシンプルなことばかりです。みなさんの仕事と生活をより充実したものにするために、本記事が少しでもお役に立てば幸いです。


(1)仕事に必要な情報・道具を机に集約・整理し、即座に利用可能な状態にしておく
自分の机を「コクピット化(最適化)」します。引き出し、足下、机上のスペースを最大限活用し、必要な情報は電子化してPC内に整理して、モノや情報を探したり取りに行ったりする時間を無くすことで、作業の効率がアップします。特にPCモニターを置ける机上台は非常に便利です。これを複数使用することで、立体的で極めて物質量の多い机が出現します。これを良いと思えるかどうかは、好みが分かれるところかもしれません。


(2)年間・月間単位の業務の内容・量を把握し、仕事量を平準化する
繁忙期と閑散期の波をできるだけ小さくし、超過勤務をしなくて済むようにします。


(3)睡眠時間と体調管理に気を配り、適度な運動を心がける
どんな職業であれ、健康な身体は最大の資本です。日中に眠かったり疲れたりしていては仕事の能率が落ちてしまいますし、周りからも良い評価は受けないでしょう。睡眠時間の確保や休養を取るのも仕事のうち。特に朝食は必ず食べましょう。


(4)ICT技術を活用して、作業の定型化・自動化・省力化を追求する
エクセルの関数やマクロをうまく使えば、今まで手作業でやっていたことが自動化できる上、正確さも確保されます。関数が入れ子構造になった計算式を組んだり、マクロを活用したりするには、論理的思考力が必要とされるので、仕事をしながら頭の体操にもなります。また、よく使う表やグラフがあれば、繰り返し使えるテンプレートにすることによって大幅な省力化が実現します。


(5)同じような仕事は、ある程度まとまった量を確保した上で一度にまとめて処理する
例えば、書類のコピーは1回1回取りに行くのではなく、何種類かたまってから取りに行く。システム等への入力作業は、書類が来た都度行うのではなく、ある程度揃ってから一気にやる。そうした小さな「時間の節約」も、積み重ねれば大きなものになります。


(6)毎朝その日の仕事をリストアップし、優先順位を付けて取り組む
どの仕事をどの順番でやるか決めて、1日の仕事量を明確にした上で取りかかります。ゴールを決めておくことで計画的に処理することができ、安易な残業を防ぐこともできます。新たな仕事が舞い込んできたら、それもすぐにリストに加えて、失念を防ぎます。人から頼まれた仕事はつい後回しにしがちですが、後で自分の首を絞めないためにも優先的に片付けたほうが良いでしょう。A6サイズのクリップボードを使用すると、机上で邪魔にならず、裏紙やメモ用紙を有効活用できるので便利です。


(7)1日の最後に業務日誌を付ける
その日にどんな仕事をどれだけどのように行ったかを、終業後退勤する前に自作の日誌(B5ルーズリーフ)に手書きで記録します。前項の仕事リストがここでも役に立ちます。学内での行事や、身近で起こったちょっとした出来事、社内外からの問合せTEL等も簡単にメモすることで、単なる仕事の日誌に留まらない多面的な記録になりますし、継続していく励みにもなります。この記録は、極力その日のうちに記入します。それによって正確な記録を付けられますし、1日ごとにきちんと仕事の中身を反省することで、今後の業務の改善に役立てることができます。また翌年度以降の業務においては、どの時期にどんな書類を起案すればよいのか、どんな用意をしておけばよいのかという目安にもなり、仕事の予定を立てやすくなるので、継続すればするほど大きな実益が生まれます。


(8)よく使うファイルはデスクトップにショートカットを置く
一般にファイル自体をデスクトップに置くのに比べて PC起動にかかる負荷が小さくなり、いちいちフォルダを潜っていくのに比べて圧倒的にアクセスが早くなります。また誤ってファイルを消去してしまったり、送ってはいけないファイルをメール添付してしまったりするリスクも回避できるため、メリットはとても大きいといえます。


(9)文房具にこだわり、便利で役立ちそうなものは積極的に取り入れる
自分の気に入った文房具、小道具、電子機器を自分で買って持参し、仕事に活用します。楽しみながら、業務の効率のアップにもつながるので、一石二鳥です。特にボールペンは自分の手になじみ、書き味がなめらかなものを使った方が圧倒的に快適です。


(10)書籍や雑誌、新聞を読んで、生産性の高い仕事のやり方を研究する
自分が主に読んでいるものは、日本経済新聞週刊ダイヤモンド日経アソシエです。日経アソシエは、実践的な内容でかなりおもしろいと思います。ビジネス誌を読むことで、普段の仕事ではつい鈍感になりがちな「ビジネス感覚」を磨くこともできます。


(11)今までのやり方・考え方を時々リセットしてみる
前任者から教わった方法、自分が以前にやった方法が果たして最善なのか、時々考え直してみることが大切です。考えた結果、やはり同じ方法を選ぶのならそれでも構いません。とにかく忘れてはならないのは、無思考に同じことを続けることだけは絶対に避けねばならないということです。「なぜ、このやり方なのか」「これが本当にベストなのか」と問い続けることが大切なのです。前例踏襲で同じことを機械的に続けると頭が固くなってしまい、臨機応変に物事に対応するための柔軟な発想ができなくなってしまいます。


(12)スケジュール管理ソフト「Schedule Watcher」を活用して公私の予定を統合管理する
Schedule Watcherは非常に優れたスケジュール管理ソフトです。インストールなしで使用可能なフリーソフトで、職場のグループウェアのスケジューラよりも遥かに使い勝手がよく、ほかの人から見られる心配もないので、予定管理や備忘録として何でも書き込めます。また、予定管理においては、プライベートの予定をあえて平日に入れるというのも一つのアイデアです。残業をできない状態を予め自ら作ることで、自然と仕事のデッドライン(締切)を意識して効率的に処理するようになります。
※公式サイト(ダウンロード先)→ http://www.geocities.jp/sako_software/


(13)業務手順書と引継書、資料集の3点セットを異動した直後から作り始める
業務手順書とは、仕事上必要となる一定の知識や作業プロセスについて明記した「マニュアルのようなもの」のことです。あえてマニュアルと呼ばないのは、それが絶対に正しいお手本のように扱われ、内容が固定化されてしまうのを防ぐためです。内容が随時更新されなければ、時代や状況の変化に対応した柔軟なやり方ができなくなってしまいます。あくまで標準的な手順書にすぎず、内容はどんどん書き換えられていくべきものであることを意識づけるために、自分はこのように呼んでいます。また引継書とは、担当者が異動で交代する際に、その席の人が担当する業務の大まかな種類や範囲(分掌)、進行中の業務の状況やこれまでの経緯、代々引き継がれてきた考え方、ミスを防ぐために注意すべき事項等についてまとめた文書のことです。これらは担当者の異動の前後で業務が滞ることなく円滑に引き継がれるようにするために、また同じミスが繰り返されないようにするために、非常に重要なものです。一般的にこれらは、人事異動が解禁されたり、特定の席に長く在任してそろそろ異動を命じられそうだという時期になったりしたときに、重い腰を上げて渋々作り始めることが多いと思われます。そうしたタイミングで作られる引継書等は、業務に熟達したベテランの視点で作られたものであるため、初心者がつまずきやすいポイントや、部外者からすると分かりづらい部分について十分な説明がなされず、異動までの時間的制約から業務全般について網羅されない中途半端な内容になることも多々ありえます。そのため異動の後には、引き継ぎ漏れの発覚や、同じミスの繰り返しという悲劇があちこちで頻発し、業務の停滞を招くことになります。こうした現象を防ぐためにも、引継書等を新しい担当に異動した直後から作り始めることが大切です。初心者の視点で作ることで、「初めてだと何が分からないか」というベテランの視点では抜け落ちてしまう部分をカバーすることができますし、業務の進捗の中で少しずつ内容を拡充していくことで、異動直前に作るのに比べて負担を軽減することができます。また、突発的に命じられた異動の際にも、慌てることなく引き継ぎを行えるというメリットもあります。自分の負担を減らすため、そして何より後任者が自分と同じ苦労を味わわなくて済むようにするためにも、今日から引継書等の作成に取りかかってみてはいかがでしょうか。


(原典:職場で若手職員向けに配信したメール、2014/2/12)
※本ブログの文体の基本は「だである調」だが、本記事は読みやすさに配慮して原文の「ですます調」をそのまま残した。また、わずかな加筆訂正をした以外はほぼ原文のままである。自分がコツコツ書き溜めてきたものを誰かに披露したくなり、職場で後輩向けに勝手に送りつけたところ、返信や感想が何人もの人から返ってきて、意外と大きな反響があった。仕事のやり方に関してちょっとした議論を喚起するきっかけになったようだった。