冬の朝

大学職員の朝は早くない。多くの職員は、始業開始30分前の朝8時を過ぎてから、ぞろぞろと事務局の玄関をくぐる。しかし自分はその例外で、圧倒的に早い。たいてい、7時半前後には職場に着いている。しかも今朝にいたっては、6時45分には自席のPCの電源を入れていた。家を出たのは6時7分。普通の職員なら、まだ寝ていてもおかしくない時間だ。こんなに早かったのは、7時から若手有志での「朝活読書会」があったためだった。2週間に一度の読書会の朝は、いつにもまして早く出勤しなければならないので、前の晩からある種の緊張感がある。8回目の今回も、定刻前に参加者がほぼ集まり、50分ほど活動した。今回は「ことば」がテーマだったので、自分は文章術の本を紹介し、文章力の重要性について主張した。2日前から終業後に自席で本を読んで、レジュメに書き起こし、その内容を理解しようとしたのだが、それでもやや準備不足だった。5分という短い持ち時間の中で重要なポイントを押さえて話すことが出来ず、またしてもまとまりのない説明になってしまった。そうした反省を残しつつも、ほかの人の本の紹介や意見交換を通じて、有意義な時間が過ごせた。参加者は自分を含めて4人だけだが、少数精鋭な分、みな意識が非常に高くて、雪の降る寒い朝にも関わらずきちんと参加してくれている。この企画を立ち上げた自分にとっては、彼らの存在は心強く、ありがたい限りである。


朝活が終わったのは8時前。ここでコーヒーを飲んでひといきつくかというと、そうはいかない。窓の外を見ると、玄関脇の階段に雪が積もっている。「これはいけない」と思って急ぎロッカーに走り、コートを羽織り長靴を履き、スコップを持ってそこへ向かうと、おもむろに雪を掘り始めた。そう、除雪である。冬場は、各課室に除雪のエリアが割り当てられており、雪が積もっていたら始業前に除雪しなければならない。ここ最近雪が降っていなかったのですっかり忘れそうになっていたが、学生や職員、来学者の通行の確保のためにも、これは重要な仕事である。積った雪をどけ、踏み固められて氷の板になった雪をかち割りながら一人で作業をしていると、あとから出勤してきたほかの職員も加わり、間もなく作業は終了した。雪を片付けて事務室に戻ると、今度は事務室の掃除が待っていた。それを終えると、8時半から今日の仕事が始まるのだった。

(30分)