鬱憤

もう限界だ。頭がパンクしそうだ。自分が考える「こうあるべき」というやり方と全く相反するような動きをしている、今の日本の社会や政治の姿をテレビや新聞で目にするにつけ、「何でそんなことやってるんだよ。今が正念場だってのに、そんなことしてる場合じゃないだろ」と苛立ちを募らせ、もどかしい気持ちにならずにはいられない。かといって、現実の社会の動きから目を逸らし、「平穏な日常」という一時的な均衡状態でしかない世界の中で視野狭窄になりながら束の間の幸福に浸るような、虚無的な楽観主義に心の底まで染まることも出来ない。自分は心配性なのである。まともな議論も、合意の形成もないまま、何も決められずにこのままずるずると行ったら、日本は一体どうなってしまうのか、それを我がこととして心配せずにはいられないのだ。


自分は、とにかく「考えずにはいられない」性質の人間である。ありとあらゆる事象や問題に対して、それを取り巻く環境や経緯や様々な要因や専門家の意見等を調べた上で、一旦自分の中にそれらを落とし込み、「自分はこう思う。なぜならこれこれこうだから」というシンプルで明確で何より合理的なアウトプットを得なければ気が済まない。それは「首尾一貫」という座右の銘に集約されているとおり、自分の信条であると同時に自分の生き方そのものでもある。「臓器提供は?」と問われれば「自分は臓器提供しないし、その代わりに誰かからもらうこともしない。自分の肉体は自分の存在の拠り所であり、自分にとって唯一固有の所有物だから誰にも渡さない」と答えるし、「国会議員とは?」と問われれば「国民の代表。歴史を熟知しながら、20年後、30年後の将来を見据え、国の発展と永続のために長期的な視野に立って『決断』するのが仕事。選挙の公約に書かれたことをそのままやることしかできないのなら、そもそも議員はいらない。議員はプロフェッショナルでなくてはならない。庶民の考えを理解しつつも、そこから一段高いところで大局を見据えて物事を考え、決断し、物事を実行する義務を負っている」とか何とかつい持論を言いたくなる。暇な時、特に風呂に入っている時、だいたいいつもその手の考え事をしているのである。自分は割と思いこみが激しいタイプであり、人の話を聞かない奴だと前の財務課長に散々いわれたことからも、それらは所詮、浅薄で一面的で独りよがりな考えに過ぎないのではあるが、しかしどんなに単純なことであれ、一度自分の頭の中でひと巡りさせるというのが何より重要だと思っている。


そんな自分にとって、この世界は、もはやとても理解の追いつかないような次元に達してしまっている。複雑怪奇過ぎるのだ。ありとあらゆる問題がこんがらがっていて、あちらが立てばこちらが立たぬようなケースがほとんどで、しかも常に変化し続けている。小さいころに教わり、見ていた世界は、一つ一つの事象が分割され独立して存在していた。車、環境問題、科学技術、工場・・・それらは別々の存在であり、それぞれとても好奇心を感じるものだった。そのころは、環境問題が何より重要なテーマであり、「車は悪、自転車に乗るのが正義」といったシンプルな考え方をしていたし、大人がなぜ車を平気で乗り回すのか、なぜ車の使用が規制されないのかが不思議でならなかった。だが大きくなるにつれ、「自動車の排気ガスが環境問題を引き起こしており、人々が大気汚染に苦しんでいる。科学技術の発展が大量生産を可能にしたことでそうした問題が起きたが、その反面で環境問題の観測や解決に寄与するのもまた科学技術であり、車に乗るのを控えて排気ガスを減らそうとすると今度は車が売れなくなり工場の稼働率が下がって国内の工場の雇用が維持できなくなり、結局困るのは一般市民」のような複雑に連関した末に堂々巡りな問題が多いことがだんだんと分かってきて、自分はどうすればいいのかと悩むことが多くなった。そして、不条理で不完全な大人の世界に対しても、やむを得ないとか仕方ないという言葉を使ってそれはそれで一定の理解を示すように変わっていった。いくら考えたところで自分が発言や行動によって影響力を与えられる訳ではなく、現実は変わらないことが多い。そこでいっそ思考することを止めてしまえば楽だったのだが、自分はそうしたくはなかった。なぜなら、どうしても気になるからだ。好奇心と探究心、それが自分を規定する最も基本的な原理なのだろう。だから、自分は今も、日々答えのない問題に徒労のような思考を繰り返し、そのあまりの手に負えなさに鬱憤を爆発させそうになりながらも、日本の将来を案じている。


願わくば、せめてその思考の一端でもいいから、ブログの記事として自分の外に放出し、ぐちゃぐちゃになった頭の中を整理したいものだ。自分にとってのブログの必要性は、高まることこそあれ、低下することは決してないのである。自分の精神的健康のためにも、今一度ブログを毎日書く習慣を取り戻したいとつくづく思わずにはいられない。

(95分)