携帯アドレス

「携帯アドレスの変更」・・・それは、就職する以前からの課題であり、自分にとって問題の先延ばしの代名詞であった。そんな長年の懸案が、9日の午後、とうとう解消するに至った。2004年3月27日以来、約8年3カ月ぶりにして、通算3度目のアド変だった。その出来事がいかに画期的なことであったか、経緯も含めて振り返ってみたいと思う。


(1)なぜ、アド変しなければならなかったのか?

アド変は極めて面倒な作業だ。自分にとってはもちろんのこと、変更を通知される相手側にとっても、登録変更の手間をかけることになる。相手にとって、頻繁な変更は疎ましい以外の何物でもない。だから、理由もなくすべきことではないし、出来るだけしたくもないことだ。だが、自分にはアド変をすべき理由があった。それは「人に自分のアドレスを見せるのが恥ずかしい」という感情があったことだった。自分がこれまで使い続けてきたアドレスは、英語で「○○が自分の生きがいだ」という意味で、○○にはあるゲームのタイトルが入っていた。そのゲームが好きであることは、高校1年生の当時も現在も変わりない。しかし、社会人として、このアドレスを人に堂々と見せることが出来るかというと、自分の心にはどうしても戸惑いがあった。「いい年して、アドレスにこういうことを書いちゃうなんて・・・」と色眼鏡をかけて見られる懸念があることは、自分とそのゲームの心理的関係において不幸なことだった。そもそも、最初にこのアドレスに変えた直後から、「生きがい」のスペルが間違っていることに気付いていて、ずーっと心の中で「このままではマズイ」と引っかかっていた。そのため2年前、就職を前にして、自分の中でアド変の機運が高まったのだが、「手間がかかる」「どうせ携帯のメアドなんて仕事上ではほとんど使わない」「次のアドレスとしてふさわしい文字列が思いつかない」という3点がネックとなり、結局そのときは変更は行われなかった。実際、就職してからも、携帯のメールアドレスを職場で交換することはほとんどなかった(携帯番号しか使わなかった)し、やりとりする場合にも赤外線通信で交換され、アドレスそのものが目に触れることは少なかったので、これまで変更を行うには至らなかった。そんな状態で問題を感じつつも今まで使われ続けていたアドレスが、今回急に変更へと動いたのには、8日に独行きの参加者で携帯アドレスを交換することになったことが直接の原因であった。研修の終わりの方で急に紙が回ってきて、「これに書いてくれ」と言われた自分は焦った。こういうふうに紙に書かされると、非常に分が悪い。そこで自分は携帯が電池切れなのにかこつけて「今はちょっと分からないので、明日連絡する」とその場では記入を断った。そして翌日、急きょアドレスを変更。新しいアドレスを参加者に通知したのだった。まさに急転直下の出来事だった。


(2)新しいアドレス
アドレスを変えるとして、どのような文字列にするのか。その問題は、自分の前に常に立ち塞がって来た。英語か独語のフレーズ、迷惑メール対策のためなるべく上限の30文字に近づけるという2つの前提で考えていた。が、いかんせんセンスがないので、気の利いたフレーズが思いつかない。どうしようかと考えていたとき、ネットで偶然ラテン語のフレーズを目にして、「これ、いいんじゃないか」と思った。自分には意味が分かるが、普通の人には何語であるかすらも分からない、そんなフレーズとして、ラテン語は理想的だった(ただ自分でも文法等は全く分からないので、もしかしたら間違っている可能性はある)。それに字数的にもちょうどよかった。そんな感じで候補が決まったのが、先週の6日の夜。ちょうど研修に行く前の日のことだった。つまり、研修中に焦った時には、すでにアドレスをどんな文字列にするかが決まっていたのである。そのため、すぐに動くことが出来たのだった。ラテン語のフレーズの末尾に、自分のある「ルール」に従った記号を付して、結果的に新しいアドレスは30字ぴったりに収まった。


(3)周知
アド変をしたら、携帯の電話帳に登録された人たちに、変更のメールを送って通知しなければならない。この作業は、2日間に渡って行われた。電話帳のうち、メアドが登録されている人が7割、電話番号のみが3割くらいだった。この7割の人たちを、中学、高校、大学、職場といったグループに分け、さらに相互に面識のある者同士にまとめて、メールを送った。複数の宛先にまとめて送ると、メールを受け取った相手には、送り先である他の人のアドレスが見えてしまう。いくらアドレスだけでは個人情報は分からないとは言え、見知らぬ相手に自分のアドレスを知られることを快く思わない人もいるだろう。だから、大学の友人に中学の友人が混ざるといったことがないように、最大限配慮した。また、一通のメールで送れる宛先は5件までという制約もあったことから、宛先の総数に対して送るメールの件数は不釣り合いなほど多くなってしまい、結局トータルで27通を送ることになった。文面は、タイトルに自分の名前、本文に「アドレスを変更しました。ご登録をお願いします」とだけ書いたシンプルなものだ。最初は人ごとに内容を変えようとしたが、らちが明かないのですぐにやめた。電話帳の中には、もう長いこと会っていない人も多かったので、メールが届かなかった人も1割ほどいた。だが、自分としてはこれを「意外と少ない」と感じた。元々、必要な人としかアドレス交換して来ず、高校時代には「謎の人」と言われたこともあったほどだったので、そのせいかもしれない。メールを送った後に返信してくれた人は2割で、これまた思ったより多かった。自分は変更メールを受け取っても基本的に返信しないのだが、今回結構返信する人がいることを知って、今後は一言だけでも返そうかなと思うようになった。そういう機会でもないと、めったにメールする機会のない人も多いからだ。それから、ヤフーやネットバンクなど、携帯のアドレスを登録しているウェブサイトの情報も登録し直した(過去1年分の受信メールをチェックして対象をピックアップした)。


そんな訳で、数年来の念願が叶ったことに、今は満足している。これでようやく、堂々と自信を持って人とアドレス交換できるようになった。キャリアを変更しない限りは、半永久的にこの新しいアドレスを使い続けることだろう。アドレスに引用したF.ベーコンの言葉に負けないよう、自分の知識と経験を高めていかなければと思っている。

(100分:7/14)