不可逆的変化

ダメなのかな、もう。自分の面倒だけ見ていればよかった、自分本位な生活が許された時代は、終わりつつあるのかな。知らず知らずのうちに積み重ね、先送りされてきた様々な綻びや軋みが、限界に達しつつあるのかな・・・。そんなふうに、やや悲観的に、今の家の状況を見つめている。



※以下、家の個人的な事情の話なので興味のない方はスルー推奨。



祖母の認知症がかなり進んでしまって、新しい情報が記憶・認識出来なくなると同時に、情緒不安定になってしまっている。朝晩家にいて見ている分には、物忘れがひどくてたまに妙なことで怒り出すな、くらいにしか感じなかったため、従来はあまり深刻に受け止めてはいなかった。祖母がやかんをガスコンロにかけっぱなしにして外に出てしまい、空炊きを起こして危うく火事になりかけたことを機に、昨年秋から、物忘れをしても事故を起こさないようにするための安全策として、電気ポットの導入や、ガスコンロを安全センサーのついたものに買い替えるなどの措置を段階的に講じてきたが、事態はもっと深刻だった。日中、祖父と二人で家にいるときに、突然ヒステリックになって祖父に当たり散らすという状態になっていたことを祖父から伝えられたのである。それにより、健康で頭もしっかりしている祖父までもが精神的にかなり参ってしまい、継続的なストレスのせいで体調が弱り始めてしまっていた。祖母自身は、何を言ってもすぐ忘れてしまい、また被害妄想のようなものが激しいため、祖父がストレスを溜め込んでいることを分かっているのかどうかはよく分からない。もはや、面倒見がよくやさしかったかつての祖母の姿を、今の祖母に重ねることは出来ない。


またこうした状況に追い打ちをかけているのが、弟が大学にきちんと通学出来ていないことである。今月初めに、弟が通っている大学から父に連絡が入り、弟が1カ月以上も大学の授業に全く出席していないことが判明した。原因はよくわからないが、大学に行かず、アパートの部屋にずっとこもっていたのだという。大きい大学にも関わらず、学生個人の状況を把握していたことに対してさすがだという印象を持った(自分の母校の学部だったら、下手をしたら1年間来ていなくても気付かないと思う。今の時代はどうか知らないが、少なくとも自分の在学中はそれくらいに極めて放任主義だった)が、それはともかくとしてその事実は家族に大変な衝撃を与えることとなった。そのせいで、家中が混乱したし、両親の落胆ぶりといったらなかった。この問題に対して両親は仕事を休んでまで色々と動いたが、未だ事態の打開のめどは立っていない。両親の心配は続いているが、祖父母の心配もそれと同様ないしそれ以上に大きく膨らんでいる。それが悩みの種となり、また祖母の精神状態の悪化にも拍車をかけていることから、祖父の心の負担をますます重くしているように見える。客観的に冷静に現状を捉えているのは、家では自分だけかもしれない。自分は弟に対しては、心配という感情以上に、家族に迷惑をかけるとは何事だという憤りの感情が強い。環境の変化に適応出来なくてうつになったとかそういうのではなく、単に意志が弱く軟弱な性格なのでずるずるとダメになってしまったのではないかと考えている。ただ、本人が正直なことを話そうとしないので、現状ではどうこうと断じることは出来ない。


そんな感じで、家族が今大きな危機に直面している。この20年間、家族全体が動揺するような大きな問題もなく、表向き平穏に過ごしてきた。そのため、自分は家族の問題というのを考えずに、自分自身の些細なことで存分に悩むことが出来た。自分の時間を自分で占有する自由を得ていた。だが、それももはやこれまでだろう。もう祖父母も相当に高齢だ。問題が問題なだけに、時が解決してくれることはあり得ないし、元に戻ることもありえない。どうしたらいいのだろうか。自分は何を考え、どういうを行動をすれば、現状を少しでも悩みを小さくする方向へ変えて行けるだろうか。その答えは容易には見つけられそうにないが、少なくとも、そういうことを考え、行動していくために、自分の時間を使わなければならないことだけは間違いない。家族でお互いに支え合い助け合うことの大切さ、そんな当たり前のことを改めて強く胸に刻んで、明日からの日々を真剣に生きていきたいと思う。

(95分)