現在形への回帰(バドミントン その1)

かつて自分はバドミントンをしていた。1998年5月ごろから2002年7月までの丸4年、学年だと小学5年生から中学3年生に渡って、スポーツ少年団と中学の部活動に参加していた。指導者が精力的で熱心だったことから、活動はかなり盛んで、練習試合や大会には毎週のように参加していた。練習メニューやコーチの指導も厳しく、クラブ内の子ども同士でも互いに競争心をぶつけあっていた。そうした環境で、周りの子どもはメキメキと実力をつけ、強くなっていく一方、運動が得意でない自分は次第についていけなくなった。高みを登っていく他の部員たちに取り残され、後輩にも追い抜かれていく中で、自分はスポーツの世界の厳しさを知り、そして強烈な挫折感を経験した。スポーツ競技の世界においては、実力こそが全てである。先輩だと言っても、実力を伴わなければ簡単に後輩から嘲笑の対象とされる。その辛さに、一体何度苦しんだか分からない。時には涙をこぼしたこともあった。だが、そんな中でも途中でくじけず、周囲を拒絶せずに、辛抱強く部活を最後まで続けたのは、やっぱりバドミントンが好きだったからだ。過酷な練習から逃げ出したくなることはあったが、バドミントンを嫌いになることはなかった。下手ではあったが、自分がそれに打ち込んだこと、努力と忍耐を重ねたことに対して、誇りを感じていたのである。


それから、8年の歳月が流れた。


バドミントンからはすっかり遠ざかり、日常の思考の中から、バドミントンというスポーツの存在はほとんど消えかけていた。かつての過酷な練習の記憶も風化してしまっていた。バドミントンが「昔やっていた」という過去形の存在になってから、久しかった。もう一度やりたいという思いは持ちつつも、実現の手だてもなく、道筋も描けないまま時はただ流れ、もうこれからやることはないかもしれないと思っていた。しかし、転機は突然訪れた。ある飲み会で財務課長から、職員有志で昼休みにバドミントンが行われていることを知らされ、それへの参加を請われたのである。そのとき、自分の胸の中で長く眠っていた情熱に、突然火がついた。やりたい!という強い思いがわき起こり、心が躍った。ずっときっかけを求めていた自分は、その場ですぐに参加する意思を伝えた。かくしてその翌日から、自分は昼休みにバドミントンをするようになった。自分の中で長い間ずっと過去形だったバドミントンが、現在形に回帰したこと、人に対して「趣味はバドミントンです」と堂々と語れるようになったという事実は、自分にとって大きな喜びであった。そしてその夜をきっかけに、自分の生活は新たな色彩を帯びることとなる。

(90分)