帰還

夕方、終業後に、帰ろうか帰るまいか、悶々としていた。残業してまでやらなくてはいけないことは何もない。ノー残業デーなので、本来は終業後すぐさま帰るべきだ。しかし自分の部署の人はなかなか帰らない。自分の仕事はなくても、人が帰らないとなんとなく帰りにくい。で、都合なんとなく1時間半くらい残ることになり、何するでもなく過ごして、19時前にそろそろ頃合いだなと思って「お先に失礼します」と言って職場を後にする。当然残業代は出ない。今まで記録上は通算10時間くらいしか残業をしていないことになっているが、実際にはその10〜20倍くらいは残っているわけで、本当に馬鹿馬鹿しいことをしているものだと思う。そんなことをするくらいなら、いっそ周りなんか気にせず、大学としての決まりを守ってさっさと帰るべきだ。定時に即帰って、家で読書か勉強でもしたほうが、自分にとっても大学にとっても結果的にプラスに働くに違いないし、よっぽど合理的だ。意味の分からん「文化」はいい加減断ち切らねばならない。せめて水曜日くらいは、終業後即刻帰るようにしよう、そうしよう、上司から命令されない限り、自分には自由に帰る権利があるのだ。


と考えていたら、携帯に電話が入った。すぐに部署の外に出て、電話を受けたら、マツダのディーラーからだった。アクセラの修理が終わったので、取りに来てほしいということだった。いつでもいいと言われたが、そこで自分は「18時に行く」と答えた。これで帰る踏ん切りがついた。17時45分に職場を去った。


ディーラーについてみると、自分のアクセラがそこにあった。水色の外装がまぶしく輝いていた。丸10日間預けていただけなのに、やけに懐かしく感じた。早速担当者から、修理費用の伝票を渡された。部品代と技術料(工賃)で86,000円。高いなぁ、せっかく入る補助金がほとんど消えてしまうではないか、と思ったけど、自分の責任だし、もう直っている以上どうしたって払わなければいけないものなので、そのまま金額を受け入れ、近日中に口座振込で支払うことを約束した。あとついでにその場で営業トークが始まって、「パックdeメンテ」という3年間5回分のメンテナンスがセットになったサービスを受けないかと勧誘された。前々からこれについては話を聞かされていた。基本的に自分では給油と洗車以外のことはやりたくないので、多少お金はかかってもオイル交換とか異常がないかの診断等はやってもらったほうが、楽で安心な上、車体も長持ちするだろう。そう思ってこれに申し込むことは前から決めていた。しかし自分から積極的に、「申し込みます」というのは何だか不自然かなーっと思ったので、セールストークを聴いて「いいな」と納得できる点を見つけてから、購入を決める返事をしようと考え、話に耳を傾けた。だがいくら聴いても、地味な話ばかりでインパクトがないので、自分はしびれを切らして、適当なところで意を決したふりをして購入の意思を表明した。雑談下手だし、商品の魅力がいまいち伝わってこないし、この営業担当者が本当に自力で契約を取れているのか心配になったが、まあ自分には関係のないことだ。


代車とアクセラを交換し、家まではアクセラで帰った。やっぱり走りなれたこの車が、一番運転しやすく、アクセルも足になじむ気がした。自分の不注意、軽率さが相変わらず目立つが、今度こそ二度と傷をつけないために、慎重に安全に運転していきたいと思う。

(50分)